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体にすみ着く常在菌が原因 誤嚥性肺炎

落合邦康・日本大学特任教授

 ヒトの体に生息する常在菌は、口腔(こうくう)、鼻・咽頭(いんとう)、皮膚、消化管、生殖器などに複雑な細菌叢(そう)を形成し、人と生涯生活を共にします。そもそも、常在菌はなぜ存在するのでしょうか。それは、細菌と人類の誕生の歴史をみると理解できます。

 地球が誕生したのは46億年前。地球上の最初の生命体である細菌は約45億~35億年前に出現しました。最も古い人類の祖先とされるサヘラントロプス・チャデンシスは約700万~600万年前に地球上に現れたそうです。この流れを1年間に凝縮し、地球が誕生した日を1月1日とすると、細菌の出現は2月下旬で、人類の祖先が出現したのは12月31日の午前になるといいます。

 つまり、人類は生命体の新参者として、細菌が至るところに存在する環境に誕生したのです。そのため、外界と接する全ての部位が細菌に覆われ、細菌はそれに適した形で体の各部位にすみ着くようになったと考えられます(図)。

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日本大学特任教授

おちあい・くにやす 1973年、日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)獣医学科卒業。73年に日本大学松戸歯科大学(現・松戸歯学部)で副手(研究助手)となり、口腔(こうくう)細菌の研究を始める。75年に松戸歯学部助手に就任し、78~80年は米国University of Alabama at Birminghamへ留学。82年に歯学博士号を取得した。87年に松戸歯学部講師、2000~05年に明海大歯学部教授、05~15年に日本大学歯学部教授を歴任。15年4月から日本大学歯学部特任教授。エイズやインフルエンザ、アルツハイマー病と歯周病菌の関係、口腔細菌と腸内細菌の関係など、独創的でありながら人々に身近な研究で注目されてきた。著書(監修、共著)に「腸内細菌・口腔細菌と全身疾患」(シーエムシー出版)や「口腔微生物学―感染と免疫―」(学建書院)など。