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日本郵政はなぜ「独善的な企業買収」に走ったのか

浪川攻・金融ジャーナリスト
日本郵政の長門正貢社長(左)と日本郵便の横山邦男社長=2017年4月25日、今沢真撮影
日本郵政の長門正貢社長(左)と日本郵便の横山邦男社長=2017年4月25日、今沢真撮影

 わずか2年のうちに、約6200億円の企業買収金額のうちの4000億円が損失処理に消えた──。日本郵政グループが株式上場直前の2015年に買収した豪州物流会社、トール・ホールディングスは、もくろみ倒れの経営状況が続き、日本郵政グループに巨額の損失を生じさせることになった。

 「成長戦略が必要だ」。15年秋に予定されていた株式上場に向け、当時の日本郵政グループの経営トップである西室泰三・日本郵政社長から、このような言葉が発せられていた。先細りの郵便事業子会社、日本郵便が新たな成長軌道を描くシナリオの必要性である。グループ内では、西室氏をトップとするごく少数のメンバーで国際物流の買収戦略がひそかに検討され始めた。

 メディアの多くも、日本郵政グループの上場に際して「成長戦略の必要性」を説いていた。上場企業としての「ガバナンス(企業統治)の強化」の必要性を指摘したメディアは少なかった。

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金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。