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人類の進化を促した能力「立体視」

當瀬規嗣・札幌医科大学教授

 人は、他の動物と比べると、身体能力で劣っている点が目につく動物です。鳥や昆虫のように空を飛べませんし、魚やクジラのようにずっと水中を泳ぎ続けることもできません。もちろん、馬やチーターのように速く走ることもできません。

 なのに、とりあえず人類はこの地球上のほとんどの地域に住み、他の動物を圧倒して、繁栄しています。その理由として、知能の発達、道具の獲得、言語や文字の発明などがあげられると思います。でも、こうしたことは身体能力そのものではありません。では、人の繁栄を支える身体能力とはなにか、と考えると、人がほかの動物に比較して優れている身体能力があることに気づきます。それが「視力」です。

 視力とは、ものを細かく見分ける能力のことで、解像力とも表現できる能力のことです。動物の中で一番視力がよいのはワシやハヤブサなどの猛禽(もうきん)類だといわれます。彼らは数十メートル上空から草むらの中にいるネズミなどの小動物を見極めて、捕まえることができます。

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札幌医科大学教授

とうせ・のりつぐ 1984年北海道大医学部卒、88年北海道大学大学院修了、医学博士。北海道大医学部助手、札幌医科大医学部助教授、米シンシナティ大助教授を経て、98年札幌医科大医学部教授(細胞生理学講座)に就任。2006~10年、同医学部長。医学部長就任時は47歳。全国に医学部は国公私立合わせて80あるが、最年少の学部長。「40代は驚きで、加速し始めた医学部改革の象徴」と話題になった。専門は生理学・薬理学で、心拍動開始の起源を探求している。